4.薔薇娼館
作詞:宝野アリカ
作曲:片倉三起也
濃紅へと沈む夕べに
土に撓まぬまま
少しずつ朽ちるのは
また一片の花弁
また一輪の薔薇
蒼ざめ浮き立つ
かつての純白
まだ薫りは仄かに
まだ記憶を留めて
すべて甘やかに
忘れよと告げるように
いま私は妬ましい
花の季が
硝子を伝わる水滴眺め
凍えることのない
肌を抱く爪は棘
指先を触れもせず
囁きも交わさずに
遠離る影を
目を閉じ追っても
瞳から植えられて
胸の奥で何度も
開こうと藻掻く
一塊の赤い芽を
恋と呼んで
慈しめばいいのですか
まだ一片の花弁
まだ一輪の薔薇
外は騒ぐ風
通り過ぎる修羅
なお薫りは立ち篭め
もうひとつあとひとつ
この身の代わりに
散り果ててゆくがいい
溜息も零さずに
叫び声も上げずに
ただひとりの名を
塗り込め差す紅
ここは蔦の蔓延る
熱の籠もる温室
咲きも枯れもせぬ
わが薔薇だけの為の
誰かの手で織り込まれた
造花のような
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